2021/03/17
カイオムニュースレター(Vol.4)
レンバチニブとの併用により持続的・強い腫瘍増殖抑制および腫瘍縮小効果を発揮
CBA-1205とレンバチニブの併用効果について出願した特許が公開されました
CBA-1205は、ファースト・イン・クラスのがん治療用抗体として、私たちが臨床開発を行っているヒト化抗DLK-1抗体です。
CBA-1205は、がん細胞の細胞表面に特徴的に発現しているDLK-1という膜タンパク質に結合して、がん細胞を死滅させる活性を持っています。
私たちがCBA-1205に治療効果を期待しているがんの1つが肝細胞がんです。
肝がん全体の85-90%を占める肝細胞がんは、早期に発見した場合には手術で取り除くことが標準的ですが、手術ができない場合や再発例では治療方法が限られており、予後が極めて悪いがんです。
更に、肝細胞がんの中でも、DLK-1ががん細胞に発現している患者さんでは予後が悪いとされています。
手術ができない進行性の肝細胞がんの患者さんの治療には、塞栓療法、焼灼療法、薬物療法などが用いられます。
薬物療法の1次治療薬としては、長い間ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)と呼ばれている薬剤が使われて来ましたが、近年、レンバチニブ(商品名:レンビマ)が加わり治療法のオプションが増えました。
どちらの薬剤も癌における血管新生とがん細胞の増殖を阻害するマルチキナーゼ阻害剤と呼ばれる薬剤です。
しかしながら、治療効果はまだまだ限定的で、半数以上の患者さんでは治療効果がありません。
私たちは、この患者さんたちに有効な抗体治療薬を届けるべく開発を進めています。
現在は、単剤での臨床試験を実施していますが、他の薬剤と組み合わせること(併用投与)で相乗的な効果も期待できるのではないかと考えています。
CBA-1205の単剤での抗腫瘍効果については、2019年の米国癌学会(AACR)において、ヒトの肝細胞がんを移植したマウスにCBA-1205を投与すると腫瘍が退縮して小さくなったことを発表しました。(図1)
さらに、私たちは、CBA-1205とレンバチニブを併せて、ヒトの肝細胞がんを移植してがん組織を形成させたマウスに投与することによって、それぞれ単独で投与した場合と比べて、持続的、かつ腫瘍の縮小効果をともなう、より強い腫瘍増殖阻害活性を示すことを明らかにしました。
この実験ではヒトの肝細胞がんをマウスに移植して、腫瘍の大きさが、約100㎣に成長した段階で①レンバチニブのみ投与、②CBA-1205のみ投与、③CBA-1205とレンバチニブを併用投与(併用群)、そして④いずれも投与なし、の4つのグループを設けて、肝細胞がんの腫瘍の成長に対する治療効果を比較しました。
いずれも投与しないグループでは日にちが経つに従って腫瘍が大きくなりましたが、レンバチニブのみ投与(①)、CBA-1205のみ投与(②)したグループでは、薬剤を投与している期間中では、腫瘍の増殖が抑えられ、特に、CBA-1205のみを投与したグループ(②)では腫瘍の成長が強く抑えられていました。(図2)
この結果は、肝細胞がんの患者さんの1次治療薬として実際に臨床で使用されているレンバチニブよりも、CBA-1205の方が強力な薬効があること期待させます。
さらに、CBA-1205とレンバチニブの併用群(③)ではより強い抗腫瘍効果が観られ、投与した全てのマウスにおいて、腫瘍が退縮して小さくなりました。
次に、投与を止めた後の腫瘍の増殖を観察してみると、レンバチニブのみを投与したグループとCBA-1205のみを投与したグループでは、投与を止めて時間が経過すると、再び腫瘍が成長し始めましたが、併用群では、投与を終了した後も、全てのマウスで効果が持続して観察され、2個体では腫瘍が消失していることが分かりました。(図3)
このように、併用群では強い腫瘍縮小効果が得られ、その効果が持続することから、CBA-1205とレンバチニブの併用投与は、臨床の場においても、高い治療効果が期待できるのではないかと考えられるのです。
現在の治療法では十分な効果を得られない患者さんに新たな治療機会を提供する可能性があるこの組み合わせは当社の発明であり、この特許が成立することはCBA-1205の知財基盤の強化にもつながります。
なお、CBA-1205の単剤での第1相臨床試験は昨年3月に治験届を提出し、7月には患者さんへの投与が始まりました。
本試験の前半パートでは、固形がんの患者さんを対象に低い用量から投与して安全性を確認しています。
順調に進むと2021年後半には肝細胞がんの患者さんを対象とした後半パートに入る予定です。
臨床試験が進み、安全性や薬効の兆しがデータとして明らかになればCBA-1205の医薬品としての可能性が高まる上に、今回得られた知見は更に有用性を拡げることになります。
私たちはアンメットメディカルニーズに挑戦し、一日も早くそして確実に開発が進むよう最善を尽くします。
<肝細胞がん>
CBA-1205の開発適応症の一つとして考えられるのは肝臓がんの多数を占める肝細胞がんです。肝臓は「沈黙の臓器」といわれており、がんに関しても初期の自覚症状がほとんどなく、一定以上がんが進行することで初めて症状が出現します。肝細胞がんの生存率は他のがんに比べて低く、治療薬への満足度が低い疾患です。