2021/08/31
カイオムニュースレター(Vol.5)
第34回日本動物細胞工学会2021年度大会 口頭発表
2021年7月27日、JAACT2021学会においてCBA-1205製造法に関する技術を公表
現在、臨床開発を進めているヒト化抗DLK-1モノクローナル抗体CBA-1205の治験薬の製造法はカイオムとProBioGenAG社(ドイツ、ベルリン)により共同開発されました。CBA-1205の製造法は一般的なモノクローナル抗体と同様、細胞培養、精製、製剤化工程から構成されます(図3)。
この製造法の一つのステップには、独自の製造技術が開発され、適用されています。
それが糖鎖付加異性体を除去する「疎水性相互作用クロマトグラフィーステップの導入」です。
本技術は2021年上期において既に特許出願を完了しています。
以下に本技術の特長について説明します。
CBA-1205を構成するアミノ酸配列には、抗体において通常、糖鎖が付加する糖鎖結合サイト(重鎖Fc領域)以外にも糖鎖が付加する可能性のある配列が軽鎖可変領域内に存在します。
動物細胞でCBA-1205を発現すると通常の糖鎖結合サイトに加えて後者のサイトにも10~15%の糖鎖が付加した構造のCBA-1205(糖鎖付加異性体)が産生されます。
この糖鎖付加異性体のみを取り出しCBA-1205の活性メカニズムの本体と考えている抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を調べた結果、生体に対して全く反応を起こさないことが分かりました。
そのため、この糖鎖付加異性体はバイオ医薬品の規制上、目的物質由来不純物に分類され、製造工程で可能な限り低減・除去することが必要になります。
カイオムは精製工程における疎水性相互作用クロマトグラフィーの導入および条件最適化を試み、様々な検討の結果、この糖鎖付加異性体をほぼ完全に除去し、医薬品の製造法として利用し得る合理的な精製法を確立しました(図4)。
早速この技術をCBA-1205治験薬の製造に採り入れ、スケールアップにおいても良好な精製収率および純度を達成することに成功しました。
今回の日本動物細胞工学会での口頭発表は、この精製法について発表したものです。
本法を使用しない限り、現在の製造技術では不純物であるCBA-1205の糖鎖付加異性体を完全に除去することは困難と考えられることから、本特許が成立すれば、CBA-1205の将来の市場供給において、バイオ後続品の参入を抑制できるものと期待されます。